振袖に心を奪われて

我が家では祖母や母の和装というものをほとんど見たことはなかった。そんな着物に馴染みがない環境で二十歳まで暮らしてきた私だが、成人式となるとそうも言っていられない。周りは親に振袖を用意してもらう友達が大多数だった。

気後れしながらも、さすがに着ないというのもな…と思っていたところ、友達に誘われて振袖の展示会とやらに出かける機会に恵まれた。

前もって成人式の振袖無料カタログを見ていたが、いざ実物を見せていただくと、衝撃を受けた。

古風な伝統柄から、モデルがプロデュースしたという現代風デザインまで、すっかり目を奪われてしまった。

さっきまで「着物…ピンとこないなぁ」なんてつぶやいていた私は、まるで自分の中に眠っていた日本女性の部分を叩き起こされてしまったように、夢中になってしまったのだ。

着物、特に振袖というものは一揃えで何十万円、中には百万円を超えるものもあるとか。一生に一度だからと我が子に仕立てる親御さんも多いのだろうが、我が家はそこまで甘えられる環境ではなく、私もまだ学生。

でも、着たくなってしまった。それどころか、どれか一つなんて選べない。

そんな私に店員さんがレンタルのプランを説明してくれる。写真撮影と式に、2着を選べてリーズナブル。これだ。古風な振袖で式に出て、キラキラした今どき柄で写真も残してしまおう。結局その場で親に電話で了承を得て、仮予約してしまった。

着物って、こんなにときめくものだったんだ。いつかお金をためて、お気に入りの一着を持てる大人の女性になろうと心に決めた、二十歳の私だった。

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